我国は殻類や果実・野菜などの農業生産が盛んであると同時に、世界有数の農林産物輸入国でもあります。その農林産物の輸入に際して、国内の農業生産や緑の資源に多大な被害を及ぼす病害虫が、輸入農産物に付着して侵入する恐れがあります。病害虫が新天地に侵入し定着すると、思わぬ大害を与えることがしばしばあります。それを根絶することは非常に困難で、多額の費用と多大な時間を要します。
北米からヨーロッパに侵入し、植物検疫のきっかけとなったブドウフィロキセラ、日本からアメリカに渡り世界的な大害虫となったマメコガネなど、その例は数え切れないほどです。
こうした事態を避けるため、海外からの病害虫の侵入と蔓延を水際で防ぎ、国内農業生産の安全と助長を図ろうとするのが植物検疫です。この事業を行うため、全国の主要な海港と空港には農林水産省の植物防疫所が設置されており、植物防疫官が植物防疫法に基づいて日々活躍しています。

当協会は、諸外国との貿易において、植物に付着侵入してくる病害虫を水際で阻止しようとする我国の植物検疫事業が、日々円滑に遂行されることを願う官民相互の要望により、昭和30年12月、任意団体として設立されました。
そして、昭和47年7月、兵庫県知事の認可による社団法人に改組され、さらには平成24年4月、公益法人制度改革に伴い一般社団法人となりましたが、官民の中間的立場に立ち、その調整役も果たしながら今日に至っています。
当協会の目的は、定款の国が行う植物検疫業務に協力するとともに、輸出入植物検疫業務の円滑な運営を図り、もって国民経済の発展に寄与することにあります。設立以来、民間の受検体制の整備と、検疫実務の官庁窓口一元化のため幾種もの事業の拡大を行い、さらに検疫手続きにおいて全国に先駆け独自のOA化を推進し、その合理化を図るなど、これからも神戸港の植物検疫業務センターとして機能していきたいと考えています。

世界有数の農林産物輸入国の我国において、植物検疫は重要な役割を担っていますが、反面物流を阻害することも事実です。農林生産の安定助長を図るという検疫の目的を達成しながら、物流への影響を最小限に留めたいという命題追求のため、当協会は既定の形に囚われず、官民のニーズに常に耳を傾けながら時代の変化を先取りし、日々の活動を通じ貢献していくことを願っています。